小児麻酔研修で成人心臓麻酔から離れておりましたが、
このたび転勤で成人心臓と再び相まみえることになりました。
基本中の基本ですが
冠動脈と灌流領域を見直したいと思います。
冠動脈の走行と名称
永遠に覚えられないナンバリングや枝の名前をおさらいします。
まず心臓の解剖から。
Terminologia Anatomica(TA)に基づく解剖学 から引用編集。
上記のように、冠動脈は
①心臓をぐるっと回る冠状溝に沿って走行する
②心尖に向かって室間溝に沿って縦に走行する
③その他の枝が走行する
ということが解ります。
ここでよく見る、冠動脈ナンバリング(AHA分類)のイラストを参照すると
このように色付けすることができます。
各ナンバーや枝の名称について補足します。
#1,#2:右冠動脈~AMまでを2等分して、その近位と遠位。
SN:洞結節枝 sinus node branch
CB:円錐枝 conus branch 右心室の動脈円錐に伸びる(上図参照)
RVB:右室枝 right ventricular branch
AM:鋭縁枝 acute marginal ※下記参照
#4 AV:房室結節枝 atrioventricular node
#4 PD:後下行枝
#5:左主幹部 LMT left main trunk
#9 D1:第1対角枝 first diagonal
#10 D2:第2対角枝 second diagonal
#12 OM:鈍縁枝 obtuse marginal ※下記参照
#14 PL:後側壁枝 posterior lateral
※鋭縁、鈍縁とはなにか?それに対するヒントが以下のサイトで確認できました。www.clinicalanatomy.com
つまり心臓のフチは、右室側は三角形のようになっていて鋭角。左室側は球状なので鈍角である、ということなのです。
それぞれのフチに沿って走るのが、AMとOMだったのです。
冠動脈の灌流領域
下記図参照。
それぞれの心筋の部位とナンバリングはAHA17segmentsに基づいています。
また、経食道心エコーでのviewに合わせています。
紫:RCA、赤:LDA、緑:LCX
重要な冠動脈灌流領域は・・・
①下壁中隔:RCAの後室間枝(PIV)もしくはLCXの後下行枝(PDA)ほとんどが右優位で85%
②下側壁:LCXの鈍縁枝。10%で後室間枝と連続する
③モデレーターバンド:RCAの第一中隔枝
④右室流出路:RCAの円錐枝(60%)
⑤洞結節:洞結節枝(60%)
⑥右室側壁:鋭縁枝AM
⑦前外側乳頭筋:鈍縁枝+対角枝の2重支配
⑧後内側乳頭筋:RCAもしくは鈍縁枝の単一支配
これを元に術中TEEで局所壁運動異常を認識したいと思います。